HAPPY CLOVER 1-好きになる理由-

 清水くんはフッと笑って

「高橋さんはやっぱりもともと出来がいいよね。きっと苦手意識が強すぎるんだよ。数学的思考はちゃんと出来てるのにな。それに比べてアイツは……」

 と言った。

 その言葉が嬉しくて顔に火が付いたようになってしまった。



 ……でもその「アイツ」って?



 その人が一人目なのだろう。私は息を詰めて彼の次の言葉を待った。

「酷いんだよね。考え方が性格と同じでひねくれててさ。教えたくないけど仕方ないよね、妹じゃ……」

「妹……サン?」

「あ、そうそう。俺、妹もいるんだ」

 ――なーんだ! 妹さんか。

 清水くんが私を見てクスッと笑った。

 まずい! 今、思わず顔が緩んでしまった。

「何考えてたの?」

「いえ、何も……」

「ふーん」

 清水くんはニヤニヤしながら私をじっと見つめた。私はうつむいてとにかくテーブルを見続ける。

「あんまりからかって嫌われたくないからな」



 ――……え?



 思わず顔を上げて真正面のきれいな顔を見てしまった。

 ニヤニヤしていたはずの彼の顔からは笑みが消えていた。そして私から視線をはずして少し遠い目をした。

「前にものすごく泣き顔がきれいな女の子を見たことがあって、ずっと忘れられないんだ」