「そんなに近寄らなくても見えるでしょ」

「うん、気がついてた?」

「私に近寄っても何もいいことありませんよ。いい匂いがするわけでもないし」

 舞は自嘲的な笑みを浮かべている。自分を過小評価しすぎだが、それも仕方ないか、と分厚いレンズの奥を覗き込んだ。

「わかってないね、高橋さんは」



 ――本当にわかってない。……何も、ね。



「でもそういうところが……」

 ――舞のいいところだよね。……今はこれ以上は言わないけど。

 だっていきなりそんなこと言って、また避けられても嫌だからさ。まぁ、俺は結構気が長いほうだからのんびりやらせてもらうとするか。

 というわけで、じっくりともう逃げ場のないところまで追い詰めたら、嫌と言うほどわかってもらうので、そのときを楽しみに待っててよね。舞ちゃん!



 ――……って、俺、やっぱりタチ悪い?