「あの・・・」

オレが喋りだそうとすると、

彼女はそれをジェスチャーで止めた。


『私、耳が聞こえないの。

だから、喋れない』



・・・・

なんと言って返していいかわからず、

困っていると、


『気にしてないから』

ノートに走り書きをした彼女は、

またニッコリと、微笑んだ。



「あ・・・」


バスが行ってしまった。


彼女も、どうやら、あのバスを、

待っていたらしい。


俺たちは顔を見合わせて、笑った。


彼女は、オレに、バス停まで一緒に行こうと、

言ったので、オレは頷いて見せた。