めったに通ることのない細い路地
を急いでいると、目の前の光景に
驚愕した。
岸本あん子がいたのだ。
しかも自分の傘を汚い段ボール箱
に入った仔犬に雨がかからない
ように立て掛けていた。
その前にしゃがんで何をしている
のかと思い見ていると、
彼女は鞄から何かを取り出した。
「お前捨てられたの??
ひとりぼっち、あんと一緒だ。」
そう言いながら優しく微笑み
パンをちぎって渡した。
「あんの元気の源だ。
お前には特別にやる。」
正直、俺はびっくりしていた。
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