「支配人？」
信くんが思わず声を出した。

「うそ…。」
「また？」
「なんでなん？」
みんながその光景を見たと同時に、今起っている事態を理解した。
支配人は居眠りをしているんじゃなくて、永眠していると…。
「もう嫌や！逃げよ！」
「だから警察呼ぼって言ったやん…。」
生駒さんと地ー坊が取り乱し出したのを、
「落ち着いて下さい。今から安全ってわかるまで何も口に入れなければ大丈夫ですよ。」
と、金谷が二人を両手で抱きしめながらなだめた。
その視線の先には支配人の右手の近くをまだ煙の出ているタバコが転がっていた。
支配人の脈を触り首を横に振る信くんを尻目に俺はそのタバコに毒物検知機を近付けた。


ピーピー。


「また毒殺…。」
太ちゃんが立ち尽くす様に支配人を見つめ言うと、生駒さんと地ー坊の顔がこわばり恐怖を物語った。
「事務所カメラないけど、犯人どーせ同じ奴やろ？カメラ見たらわかるやん。はよ見よ。」
あっけらかんと高くんはそう言ってモニターの前へと行った。
残された支配人のタバコに毒物検知機を近付けていると、信くんが操作しだしてモニターに休憩所の映像が映し出された。

支配人の残されたタバコは全て毒物検知機が反応した。
早送りの様な状態でどんどん過去へとさかのぼって行く休憩所の風景。
22時前で信くんがいったん停止した。
磯俣がポケットから新しいタバコを取り出しているのが映っていた。
「ここから磯俣のタバコに触った奴が犯人って事やな。今の所は部外者も入ってきてないし。」
太ちゃんがそう言ってから、早送りを使ったりしながら事件が起る瞬間までを、みんなでモニターを見つめていた。
その行為が磯俣のタバコには一切誰も触れていないって事をみんなの目で証明してしまう事となるとも知らずに…。