「あ? 悪かったな、暴力的で」
「い、や……そんなこと」
「お前映画好きなくせにそういう想像力はねぇのかよ、純粋培養お坊っちゃまが。だったらホラー映画なんか撮んなっつーの」
「……すいません……」
「シュン、そんな言い方……」

ユカリにたしなめられてようやく口をつぐんだが、ナオはすっかり俯いてしまった。
ナツが、その場を取り持つように言う。

「これから試す手間が省けました。時間を無駄にしなくて済む」
「……ナツ先輩、あの」
「もう一つの可能性、ね。……誰かが竹田先生を殺して、他人に罪を擦り付けようとした。結果、僕たちは閉じ込められた」
「どっちにしろ、閉じ込めた犯人は、窓が割れないことを知っていたってことだから……それで、学校関係者か……」
「生徒か教師か、用務員……出入りの業者も色々いるし、特別顧問のいる部活もあるし」
「学食のシェフとか、庭師さんもいるね」
「なんだよ、結構いんじゃねーか」

手間と人手と金には糸目をつけない、悠綺高校だからこその、難点といえる。
これが普通の公立高校だったら、その数も規模も、ぐっと減るだろう。

「誰かに罪を擦り付けようとして、って……別に僕たちが狙われたわけじゃないってことですか?」
「そういう可能性もある。誰でもいいから閉じ込めたかったのかも」
「でも、あえて俺たちを狙った可能性も、捨てきれませんね」

可能性、なんて言い出したら、きりがない。
いつも、可能性は多い方が有利で高位な社会で暮らしてきた彼らにとって、逆にそれに苦しめられることになるとは、思ってもみなかった。
自分たちが今までいかに守られてきたかを知って、背筋が寒くなる。