「普通の感覚だったら、窓のつっかえ棒なんて意味ねぇだろ。二階三階はまだしも、一階なら割れば外に出られる」
「あ……! え、じゃあ」
「さっき試した。全部アクリル製だ、ちょっとやそっとじゃ割れねぇよ」
「試したって……」
「椅子で殴ってみたり、思いっきり投げてみたりしたけど、駄目だった。傷は付いたけどな」
「な、投げ……」
「んだよ」

目を丸くするナオやヨリコに、シュンは眉を寄せた。
温室育ちの彼らには、窓を割るなんて思い付きもしない手だったのだろう。
それを思い付いた瞬間に行動済み、しかも平然と言ってのけるシュンに、はじめて見る生き物に向けるような視線をやっても、無理はない。
しかし、そう割り切って受け流せるほど、シュンは大人でもなかった。