「あ……僕、誰か呼んできます!」
「ま、待ってナオくん、私も行く……っ」

突如現れた非日常から――死体から、逃げるように、西寺ナオとヨリコが飛び出して行く。

少しでも早く、少しでも長く、死体から目を逸らしたかったのだろう。
ヨリコは特に、最初に死体を発見したのだ。
ショックの大きさは計り知れない。

「……っ、」

石神ユカリが、口に手を当ててしゃがみ込んだ。
色白の肌が、真っ青になっている。
それでも死体から、大量の血から、恐ろしい形相の竹田の顔から、目を離すことができない。

こわいもの見たさなんかではない。
これほどまでに、“死”というものをまざまざと見せつけられる事態に、直面したのははじめてだったのだ。

「ユカリ先輩、」
「大丈夫ですか」
「おい、もう見んな」

荻野シュンがユカリの腕を引いて、強引に部屋から出す。
仕草は乱暴だが、それでようやく彼女の視線は、竹田から外れた。

その間にいくらか冷静になったマサトとナツが、死体の瞼を下ろして、小道具の大きなシーツをかける。
こんな短い時間で少しでも冷静になれたことが驚きだが、人はどんな状況に直面しても、呑み込めないということはほとんどないものなのだ。