それはいつか、真琴が自分で漏らした秘密だった。
『全部揃ってる奴に何がわかる』。
丸井に盗撮を命じたことを非難した夏生に、自分のしたことを棚上げして食ってかかった吉村が言った言葉だ。
顔も頭も家柄も金も、全部揃っているお前なんかには、自分の気持ちはわからないだろう、と。
その言葉を聞いた真琴は、悲しげな顔をして、辛い過去を匂わせた。
はっきり彼の口から聞くのは初めてだが、直姫も、それを薄々わかっていた。
「うちの会社は、父で三代目だから……いいよな将来の社長はって、よく言われてた。何にもしないで遊んで暮らしてていいんだろって」
「……それは、物凄い勘違いだね」
「うん、子供だったから。……それと、僕の髪って、茶色いでしょ? それも、他にあんまりいなかったから」
真琴の両親は二人とも生粋の日本人だし、彼の色素が薄いのは生まれつきのことだ。
実家の医療機器製造会社が三代で日本を代表するまでに大きくなったのは、曾祖父と祖父と父親が苦労して頑張ったから。
真琴自身も将来はそれを継ぐつもりで、経済学を学びたいと言っていたことがある。
それなりに大きくなってみれば、どこにも非難される筋合いなんかないと、考えてみるまでもなくわかる。
なのに、子供だから、無知だから、全てが糾弾と迫害の理由になるのだ。
よく食べることも、少し気弱なところも、真面目で心配性なところも、ふにゃりとした笑顔でさえも。


