ホールの大きな扉を潜ると、真琴は止めていた息を吐き出すかのように、言った。
「はぁ。あの人、ほんとに松矢さんのファンなんだね……」
「あそこまでがめついと、逆に強かそうだよね」
「え?」
直姫の呟きを、真琴は聞き返す。
まさかあんなあからさまなコネ貸してアピールに気付かなかったのかと、直姫は信じられない思いで真琴を見た。
直姫の珍しい感情表現には触れずに小首を傾げると、真琴は言う。
「それにしても懐かしかったなぁ、光村。小学校の四、五年の時だったから……もう五年になるんだ」
「そんなに仲良くなかったんでしょ、ほんとは」
「んーん? 仲、良かったよ」
真琴はそう言って、首を横に振る。
「優しいし気が利くし、すごく気が合ったんだ、光村が転校してきた頃は」
過去形の言い回しだった。
直姫はなんとなくの事情を察して、正面出入り口の方へは行かずに、開放されたドアから庭へ出た。
ぽつぽつと人が歩いているくらいで、映画祭の関係者らしき人は見えない。
遊歩道をどこへ向かうともなく歩きながら、口を開く。


