「大学を出たら松矢監督の下で働きたいと思ってまして」
「へ、へぇー……そうなんですか」
「えぇ、それでゆくゆくは……」
と、困ったようにあちこちにやっていた真琴の視線が、ある一点で止まった。
「あ」という声まで出てしまって、田畑の話も止まる。
真琴は、さっき陰口を言っていた部員たちのさらに後ろ、一層小柄で俯きがちの男子生徒を見ていた。
「……光村……?」
恐る恐る、といったふうに口に出すと、光村、と呼びかけられた彼は、おずおずと顔を上げた。
強張る顔で無理に笑って、「やぁ」と、間の抜けた声を出す。
「佐野、久しぶり」
「久しぶり……! え、名桜館に?」
「い、言ってなかったっけ」
「知らないよ、遠くに引っ越すとしか」
目を丸くする真琴と、気まずそうに返事を返す光村を、田畑が訝しげに見る。
もうすこしで業界へのコネの第一歩を作れそうだったのを、邪魔される形になったことに苛立っているのか、眉を寄せて光村に言った。
「佐野さん、こいつと知り合いなんですか?」
「あ、小学校の時のクラスメイトで」
「え?」
田畑の目が、あからさまにいやらしく輝く。


