ONLOOKER Ⅳ




「俳優の佐野さんと……そちらは、モデルの」
「……ドーモ。荻野シュン役の、沖谷准乃介です」

その声に、一瞬周囲がざわつく。
気付いて遠巻きに眺めてはいたものの、声をかけて確かめる度胸はなかった人たちだろう。
まさか自分から名乗るとは思わなかったのかもしれない。

「羨ましいですね、そんな方たちに出ていただけるなんて。去年佐野さんが出てた映画、すごくよかったですよ」
「あ……ありがとうございます」
「実は僕、あの映画の松矢監督に憧れてて」
「え、あ、そう、ですか」

それが、彼にとっての本題だったのだろう。
わかりやすい人だ。
要は、憧れの映画監督と知り合いである真琴に、接近したかったのだ。
その証拠に、その後に続いた映画の感想は、真琴の演技に対するものではなかった。
興奮気味に大きくなった声が、注目を集めてしょうがない。
准乃介に自己紹介までさせておいてほとんど顔を向けない失礼さと厚かましさに、紅が居心地悪そうに目を泳がせる。