「そうじゃねぇ、そうじゃねぇだろ」

と、居吹が顔を歪めて言う。
ちなみに屋内で、かつ薄暗い上映用の会場のためか、今日の彼はハーフリムの眼鏡だ。
長めの髪もきちんと後ろでまとめている。
どうしたんですか、と真琴が離れた席から身を乗り出すと、居吹はギロ、とそちらを睨んだ。

「なんなんだよ俺の扱い。ド変態じゃん! 人間のクズじゃん! 腐りきってるじゃん!」
「ド変態なのは居吹じゃないよ竹田樹だよ。大丈夫、死体役キマってたよ」
「嬉しくねぇ! つうか、こう……イメージってもんがあるだろうが!」

公の場だからか、今日は服装も普通の黒いスーツだ。
さすがにいつもの白や明るいグレーや、レザーパンツは遠慮したらしい。
そんな意外な良識のある居吹を、五人は真顔でじっと見た。
数秒の沈黙が生じる。
居吹は、言った。

「ちげぇよ?」

そんな真っ赤な髪とホストみたいな風貌をしておきながらイメージなんて気にしてたのか、と言わんばかりの視線に対しての言葉だった。