母さんは慌てて受話器を取り、電話に出る。

母さんがなんて言ってるなんて聞こえなかった。

頭がおかしくなかったのかな?
うまく頭が回らないや。
ぐるぐるなんかが回るのに回っていない。ああ、意味が分からない。


なにが、どうして、なにが…

「…奈、…緒、奈緒!!」

母さんの声によって現実に引き戻される。

「愁也くんのお母さんから」

私はガタガタ震える足でなにもない、愁ちゃんにはなにもない!!と願うように思いながら受話器を取った。

「もし、も…し」
『…奈緒ちゃん…』

電話越しからは愁ちゃんのお母さんの声。震えているのはきっと、気のせいだ、

『あのねっ、…奈緒ちゃん、…愁也がねっ』




…ーなんで、泣いてるの?




『愁也が死んだの』


電話を伝って静かに呟かれた言葉。ズキズキ、と頭が痛くなってくる。

「…、…ぇ…?…」

『愁也が、ぁっ』
「やだ、やめて…」
『奈緒ちゃん…』
「冗談キツいよ、」
『愁也は…ー』
「やめてっ!!!!!!!」






    愁ちゃん、




 …ー愁ママは嘘つきだよ。