「つき……」 彼女が紡いだひとつの単語。 目線を彼女に向けて、同じ方向に頭を傾けた。 「……朧月だ」 薄い雲のカーテンを纏って。 満月より少しだけ欠けたまるい月が柔らかく光を注ぐ。 「素敵ね」 「うん…、綺麗だ」 綺麗だ。 月が。 月が、綺麗だ。