『 いいな~、繭が作った蕎麦
  俺も食べたい 』


「 食べに来ればいいのに 」


『 行ける距離じゃないんだよ 』




変なの~、と言いながら
茹でたお蕎麦を机に運んで




「 いただきまーすっ 」




電話を切らずにお蕎麦に手をつけた。
不思議と、どこにいるんだろうとは
そのとき思わなくて、おいしい、と
受話器の向こうにいるあきに
聞こえるように呟きながら
10分ほどで蕎麦を食べ終えた。




『 地獄の10分だった 』




こみ上げる笑いを抑えながら




「 あけましておめでとう、あき。
  今年も私をよろしくね 」




改めてそう言えば、
あきはしばらく黙り込んで、




『 ・・・・うん、・・・うん 』




それだけ、返ってきた。
首を傾げながらどうしたの、と聞けば
”なんでもないよ”とあきは笑って
それから朝までずっと電話をしていた。