「 ・・・情けない男だって
  笑っていいよ、繭 」


「 ・・・・・っ 」


「 ”あの時”、”あの瞬間”、
  繭が目にしたもの全てを
  忘れて欲しいと願った 」




真っ暗で何も見えない。
聞こえるのは、あきの声だけだった。




耳を塞いでも、脳に響く
あきの声は今まで聞いた中で
きっと、1番悲しそうで、




それなのにどこか、すっきりしていた。




「 神様は優しいね。
  どうしようもなく意地悪なのに、
  奪った繭の記憶を全て
  俺に預けてくれた 」


「 ・・・・やだ 」


「 少しだけ思い出して欲しかった。
  だから、あの日、繭に電話したんだ 」




何を、言っているのか分からない。
だって”いない人”は喋らない。




触れることもできないのに。