中学生の頃は入れなかった。
お父さんがいないことを
どうしても実感してしまう
この部屋が大嫌いで、
手を合わせたのは高校2年の夏のこと。




「 ・・・また、遅くなっちゃったね 」




あの時も、入るのが嫌だから、と
命日を過ぎたこんな時期だった。
ごめんね、とこの部屋で1人
膝を抱えて泣いていた。




この部屋はお父さんが仕事明けで
疲れてよく寝ていた部屋。
和室が好きだとか畳が好きだとか
畳の匂いに包まれてお昼過ぎまで
お父さんはよく寝ていた。




「 お父さん、私、元気だよ 」




手を合わせたあと、写真の中で
優しく微笑むお父さんに話しかける。




高校を卒業するまでは
毎朝手を合わせて”いってきます”を
言うのが日課だった。




出て行ってからもう何年も
帰ってきてなかったから
本当に、久しぶりで。