俺がこの街へ来て一週間が経った。すっかりこの街にも慣れ、涼子さんが言っていたようにこの街の人も良い人達ばかりで会う度話しかけられるようになった。そしていつもしていた帽子も外して出るようになった。それなのに変な顔視線を向けてくる人もいなくてただ笑顔が向けられていた。だが俺にはこの優しさは辛く怖いモノでしかなかった。いつか裏切られてしまうのだと、きっとそんな日が来るのだと、街の人と関わる度にそんな事ばかり考えるようになった。俺は近いうちにここを出て行こうと決めた。まずはこの街へ恩返しをする。ただこれから災いが起こって人に危害が加わるのなら直ぐにでも出て行こうと考えた。


「陽炎!はいっ!これ貰って!」


差し出してきたのはビーズを繋ぎ合わせてできたネックレスだった。


「あたしこんなのしかできなくて…首に付けて。絶対外しちゃダメだよ。」


水桜は俺にそのネックレスを付けると満足そうに笑った後念を押してきた。俺は笑って頷いた。


「ところでなぜこれを俺に…?」


水桜はそう聞かれた瞬間押し黙り何かを言いたげなそれでも言いたくないというような動きでもじもじしていた。俺はその動きは見て取れたがなぜそうなるのか分からなかった。言ってはいけない事だったのかと思い思考を巡らせていた。すると決心がついたのか俺に向き直った。


「あのね。それ好きな人にあげるものなの。街の仕来たりって言うらしいんだけど好きな人に物を何かあげて好きって気持ち伝えるの。だからその…陽炎に…プレゼント…貰ったら無効ってのにはできないんだって…。」


俺は目を見張った。こんな小さな子に求愛されてしまったのだ。もうすぐこの街を出て行くとも知れない俺に渡すのだ。俺はどうしていいものか悩んだ。


「その…気持ちはありがたい…。でも水桜はまだ小さい…。だから…」


悩みながら言葉を並べて話す。ふと水桜を見ると不安気な寂しい顔を向け今にも泣きそうな顔をしていた。


「だから…?あたしじゃダメ?あたしの事…嫌い?」


俺はその言葉に反応して直ぐ首を振った。


「いやだから…だから水桜が大きくなってもまだ俺の事好きなら結婚でもなんでもしてやる。」