出口へ近付いた時横から柱が倒れてきた。「この子を守らなければ…沙夜みたいにこの世から消えてしまう…」そう感じると俺は走る速度を更に上げ飛び出した。その柱は交わせたのだが走った先にあった別の柱に足を取られた。グズグズしていると2人ともこのまま死んでしまう。俺はその子だけでも助けたかった。


「愛夢ちゃん!逃げろ!…っ…早く!…うっ」


「お兄ちゃんは?」


「いいから早く逃げろ!…っ」

その子はビクッと怯えるように母親の元へ走っていった。俺は倒れた衝撃で昨日受けた痣が痛みを伴い、立つにも身体が言うことを聞かず動けずにいた。熱さに焦りを感じていたがふと楽になれると考えが過ぎった。俺は脱力し目を閉じ生きる気力を失いつつあった。そして意識が遠退きかけたその時、俺の身体が宙に浮いた。見渡すと昨日の主犯格が他の人を引き連れていた。さっきの愛夢という子が1人だけ出たことに不思議に思い聞いてみると、俺が倒れて動けないことを知り助けに来てくれたようだった。俺は担ぎ出され火事の場所より少し離れた土の上に寝かされた。外へ出ると新鮮な空気が喉に入り噎せ返る。それと同時に周りを囲まれた。


「昨日は悪かった。俺達は部外者がこの街へ入ると災いが起こると代々言い伝えられているんだ。その結果がこれだがお前は人を救ってくれた。感謝してもしきれない。本当にすまなかった。」


皆個々に頭を下げる。俺は答えようと懸命に身体を動かそうとした。思い通りには動かなかったが俺が起き上がることを悟ったのか周りも心配して支えてくれた。掠れた声で時折噎せながら絞り出すように話す。


「大丈夫…です。皆さんが無事で良かったです。」


何よりも心配してくれていたのは水桜と涼子さんだった。俺に駆け寄り必死に声をかけてくれた。俺が火事で妹を失ったこと、その事で火傷を負ったことを全て話した相手だったために一番不安気な顔で俺を見ていた。俺は笑顔で応えた。


翌日から愛夢ちゃんの家は跡形もなく燃え尽きてしまったために街の人が総出で家を作り始めた。この街は他の所から力を借りず自分の街の人達の力で街全体を作り上げる言い換えれば独立した街だった。