翌日、目が覚めると水桜と涼子さんは起きていた。俺は2人の姿を見ると一言挨拶をすませる。涼子さんはご飯が出来ていると告げる。俺は一つ頷き卓の周りを囲んだ。


「よく寝れました?」


俺に笑顔で問う。俺はなんだか照れくさくただ頷くだけだった。水桜はそれを見てふふふと笑う。

「な、なんだよっ」


「んーん。なぁんでもなぁい。」


「なんでもないって…なんかあるだろ〜教えろ。」


「教えてください。」


「教えて…くーだーさーいー。」


「やだ〜w」


涼子さんは黙って仄かに笑い光景を見守る。こんなたわいないやりとり。俺はそれだけでも十分幸せを感じた。


俺はその日この街に合った服を買おうと街へ出た。するとやはりその街の住人は俺に目を向けてきていた。俺が見渡すと皆目を逸らす。その中を気にせず突き進んだ。店へ着くと俺は適当に自分に合った服だけ買いその店を出た。その店の人が俺を一目見た瞬間焦りの色を見せたから。俺はその店を出てとぼとぼと歩いていると急に街の人達が一点を目指して走っているのを捉えた。俺はその流れに便乗して一緒に走っていった。行ってみるとある家から火が燃え盛っていた。その瞬間、俺は急な過呼吸と目眩に襲われた。


「あ…あ…あ…。沙…夜…沙夜…沙夜…」


周りは皆火事の事であたふたしているため誰も俺の不可解な行動には気付かない。するとどこからか助けを呼ぶ声が聞こえた。


「助けてー!誰か!娘が…愛夢がまだ中にいるの!お願い!」


泣きじゃくりながら母親は叫ぶ。俺はその声を聞いて周りを見渡す。だが動く者など誰もいず、皆顔を見合わせるだけで誰も助けに行こうなどとしなかった。


「何で…何で誰も助けに行かねぇんだ!困ってるだろうが!お前ら男手は子供1人助けられねぇのか!今も中にいる子は助けを求めてるのに…っ」


俺はそう叫ぶと近くにあった水を被ると火の中へ飛び込んだ。周りはただ唖然と見ているだけだった。中へ入ると既に崩れそうなくらいに脆くなった柱達があった。


「愛夢ちゃん!返事しろ!愛夢ちゃん!」


時折噎せながら懸命に叫ぶ。すると泣き声と共に女の子の助けを呼ぶ声が聞こえた。俺はその声を頼りに奥へと進む。すると7才くらいの女の子が膝を抱え泣いていた。俺はその姿を目に留めると駆け寄り、抱き起こしながら声を掛けてやる。女の子は煙に噎せ苦しそうな息遣いをしている。