今までに出したことのない…いや二度目か。いつも出さない程の大声で叫んだ。大声出すのも珍しいために俺は言い終わると咳とともにさっきとは違って呼吸がしづらく荒い息遣いになっていた。俺の声を初めて聞いたために周りの人達の動きがピタリと止まる。疑問符を浮かべる者までいたが俺は叫び続けた。苦しい中必死で2人を守ろうと声を張る。


「あんた達は間違ってる!…っ…この街全体が…狂ってる…もう止めろよっ!2人だって…傷ついてんだ。」


遠ざかりそうになる意識をグッと堪え説得に試みる。だがその中で俺の言葉に耳を傾けず否定的な人がいた。


「君に…昨日来たばかりの君に…何が分かるって言うんだ!何も知らない君にこの街の事をどうこう言われる筋合いはない!」


その一言に便乗して周りにいた人達は「そうだそうだ」「出てけ!」などと口々に叫んでくる。俺は悔しかった。


「何も…何も知らない!」

一言で周囲はシーンと静まり返る。俺は言葉を続けた。


「どうこう言う気もない。でも俺を助けてくれた人を、こういう風にされるのは気に食わない。それに他から来た俺でもあんた達が悪いように見えるんだ。と言うことはこの街全体がおかしいとしか思えない。どこに行ったって避ける事はあってもこんな苛めじみた事をする街は今まで見たことがない。でも現にこうしてあんた達みたいな多勢で少数を責めるやつらがいる。…これ聞いても気づかないのか?自分達に否がある事を。」

皆顔を見合わせ挙動不審な仕草を見せる。


「…否だって?」


さっき俺に言い返した男は鼻で笑いながら見下ろしていた。その男は皆を纏める力があるらしくその男の言動に周りは従い便乗している。


「俺達は悪くない。こいつらが悪いんだ。この街の風紀を乱している。こいつらのせいでこの街は穢れる。それは誰もが分かっている事だ。それを俺達は見逃せないだけだ。」


どうだとでも言いたげな顔をしている。俺は負けじと言い返す。