────そしてあれから8年後。


私は17歳になった。この日もいつものように境界線へ足を運んでいた。すると水平線の向こうに1つの人影が見えた。よく目を凝らしてみると見覚えのある人影だった。私は急いで街へ戻った。



───俺はいろんな街を回り続け再び同じ街へと辿り着く。外から見るとその街はいつか見た景色と何ら変わりはなかった。そして境界線に近づいた時、目の前にある人集りにふと足を止めた。


「陽炎〜!おーい!」


目の前にはあの頃小さかった女の子の面影と重なった娘が立って手を振っていた。その横には涼子さんがいた。そしてそれを取り囲むように街の人が集まっていた。


「陽炎!おかえり!」


娘──水桜は走ってくるなり俺に抱きついた。


「やっぱ水桜だろ。たく、明るいとこは変わんないな。ただいま。」


俺は抱き返した。暫く2人で喜びを共有し合った。


「ねぇ、あの時の約束覚えてる?」


不安そうに見上げてきた。今度は俺から手を伸ばし抱き寄せた。


「あぁ。覚えてるよ。」


俺は抱いた手を離し見つめ合う。


「水桜。綺麗になったな。」


そして膝を付いた。右手を伸ばし水桜の左手を取った。そのまま見上げると水桜の照れた赤い顔が目に入った。俺はその顔を見てふっと微笑みすっと目を閉じる。そしてゆっくり目を開きまた水桜と目を合わせる。


「水桜。俺と、結婚してください。一生幸せにします。」


その言葉で水桜の表情はぱぁぁぁと表現するのが相応しいほどの明るい今まで見たことのない笑顔となった。そして俺に抱きついた。


「うん!うん!結婚します!陽炎!覚えててくれてありがとう!大好き!!」


俺は次の日再会した水桜と式を挙げ毎日幸せな日々を過ごしている。次の年には子供が生まれた。名は水陽(みなひ)と名付けた。俺達は新しい命と共にこれからを生きる。

この街の人達は俺に優しさを教えてくれた。それと共に俺に生きていく場所を与えてくれた。どんなに顔が傷ついていても、どんなに俺が人に頼ることを嫌っていようとも受け入れてくれた。俺はこの街と共にこれからを生きていく。大切な家族を守りながら。