俺は放浪人。行き場を失った流れ者。何かしら助けようとする人がいてもいいと思うのだが誰も関わろうとさえしてこない。俺は…その人達に何もしていないというのに。ただ顔に痕があるだけなのに。



俺は昔、火傷を負った。妹を助け出すため火の燃え盛る家の中へ飛び込んだ。だが、出る途中焼けて脆くなった柱が倒れてきた。俺は妹を庇った時、片腕と顔の半面に火傷を負った。それ以来人がその火傷を見る度に避けていくようになった。同情なのか、それとも関わりたくないだけなのかそれとも…。「言いたいことあるなら言っていけよ!」…いつも思う。けど言いたいことはもう分かっている。きっと「醜い」「穢らわしい」「可哀想」などとつらつら思っているんだ。結局妹は、俺が助けに行くまでに倒れていたタンスに押し潰されていたのが原因で、助け出したその晩、俺より先にあの世へ逝った。



そんなある日、弱った俺に女の子が話し掛けて来た。


「お兄ちゃん、どうしたの?どこか痛いの?…お腹…空いたの?」


俺が黙って頷くとどこかへパタパタと走っていってしまった。俺はまた避けていくのかと動かない体だが思考を巡らせていた。するとさっきの女の子が重そうに何かを持って戻ってきた。


「お兄ちゃん、はい!これ食べて!」


俺の目の前には加熱しなくても食べられる物や完成済みのご飯などが差し出された。


「いい…のか?」


精一杯声を絞り出し女の子を見上げた。女の子はうん!と笑顔で答えた。俺はそれを見るなり無我夢中で口に運び、時折噎せそれを見た女の子は俺の背中をさすった。食べほすと女の子は俺の火傷のある頬に触れると四角い箱を差し出してきた。

「ねぇ、これ使ったらそれ治らないの?」


差し出してきたのは救急箱だった。


「治らない。一生残る。…なぁあんた、俺から逃げないのか?なんで俺に近づく?みんな…避けていくのに…。」


その女の子はキョトンとしていた。俺はだんだん話し続けるのに戸惑いを感じそれに伴い声も小さくなっていく。女の子は次第に明るい元の笑顔へ戻すと俺の沈んだ顔を覗き込んだ。

「な、なんだよ…」


「お兄ちゃんって友達いないでしょ。」


「い…いるよ。」