そこには
ドロドロの液体の中に
人の頭部のみ残された
なんともおぞましい
光景があった。


「貴様・・・
4人も襲わせたんか!!
この外道が」


ラセンは今や
怒り心頭である。


「いったい
どうしたっていうの??」


ミストの質問に
答えるように
ハゼルが呟く。


「・・・人体実験だ。
あの野郎
人間を取り込む
スライムに4人も
食わせてやがった」


苦悶の表情を浮かべながら
息絶えている
哀れな人間の顔に
ラセンは見覚えがあった。


「お、お前・・・」


向けた人差し指が
ガタガタと震える

しかし、死人に口なし。
ドラクエ風に言うと
「ただの屍のようだ」である。


「なんで、なんでや
別れたときはあんなに
元気やったやないか」


(助けてくれてありがと)

(お兄ちゃん強いね)

(ラセン兄ちゃん!!
僕も一緒に行く)

(お腹空いたね・・・)

(見てよほら!!りんごだよ)

(戦いが終わったら・・・
また一緒に遊んでくれる?)

(兄ちゃん)

(痛いよ、苦しいよ)

(なんであの時
置いていったのさ)

(ヒドいよ・・・兄ちゃん)

気が付くと
ラセンの目からは
大粒の涙が溢れていた。


「ワイは、阿呆やな
見捨てたも同然や・・・
カンユ、ごめんな」


より一層鎌を持つ手に
力が込められていく。

すでに相手は虫の息である。


「貴様は、貴様は殺す
覚えとけよ・・・
ここでは死なんけどな
試合が終わったら
見つけ出して殺したる!!」


涙をこすりあげて
息を吸い込む。


「はよう失せろ」


鎌を振り上げ
へそから上を
真っ二つに切り裂かれ
男は光と共に消えていった。

ラセンは一人
上を向いて必死に涙を
堪えていた。















「カンユ・・・」