「儂は炎の中で生まれ
ずっとここで暮らしておる
齢800歳のこのボロウに
貴様の炎など
シャワーのようなものじゃ
グァッグァッグァッ」


これは予想外だった
まさか炎が通じないとは
カエン本人も
思っていなかっただろう。

(肉弾戦はどうだ?)

隣の自分に意思を送る
どうやら賛成のようだ。

刹那、自慢の神速を生かし
ボロウに飛びかかるカエン。

その拳は一寸の狂いもなく
敵の心臓を貫いていた。


「カハッ」


(やったか?)

そう思った次の瞬間
魔物の大きな口が
カエンの腕を捕えていた


「くっ・・・ガァッ!!」


激痛が腕を走る。

痛みで意識が朦朧とする。


「こんな・・・
こんなところでッ!!」


「終わりたくないだろ?」


「えッ!?」


声をした方に顔を向けると
懐かしいあの男。


漆黒の髪
鋭い眼光
古風な着物のような鎧
そして・・・


「貴様は・・・
何をしてるかと思えば
死ね!!死んでしまえ!!!」


この見事なわがままさ


「刀の人・・・
じゃ・・・ねぇか・・・」


苦しそうに
それでも笑って
カエンは呟く。

これが彼の
精一杯なのだろう。


「誰が刀の人だ
ちゃんと名前はある」


そう言うと腰の
長刀を引き抜き一振り。

地面に爪痕のような
亀裂が走る。


「儂を無視して話を
進めるとは・・・
貴様ら相当阿呆じゃな」


グァッグァッグァッ
と笑いながら
腕を噛む力を強めていく。

カエンが力を込めてないと
今にもちぎれそうだ。


「このままじゃ・・・
ヤバい・・・ぐぁッ」



ブチン



ちぎれた・・・。



いや、ち『斬れた』


「ア゛ッ・・・」


悲鳴を上げる前に
絶命するボロウ。

剣一閃、男の刀は
見事に首と胴体を
切り離していた。


ズウゥゥゥン


ボロウの巨体が
沈み、眼前に男が現れる。


「ルシファーだ
貴様のようなカスでも
一次に合格できるのなら
落ちたクズ共の顔を
拝んでみたいぜ」