クチャクチャと
物を食らう
音だけが聞こえる
静寂の火山。

そこに魔術の詠唱が
響き渡る。


「魔術【陽炎】解除」


化け物の体から
急に爆発音が
したかと思うと
体中から炎が吹き上がる。


「グォァァァぁ」


悲鳴を上げ
のたうち回る化け物。

何が起こったのか
さっぱり分からないようだ。


「しぶといな・・・」


溶岩の中から姿を
現したのは
他ならぬ自らが喰らった
さっきの男であった。


「き、貴様・・・
何故生きておる!?」


肥大化したその体は
元の女の原型すら
とどめていなかった。


「さっきの術
【陽炎】ってヤツでさ
炎を分身に変える術だ。
込める魔力次第で
違う強さの分身が
いくつも作れるのさ
ちなみにさっきのヤツは
全能力5/1の分身だ」


そう言うと
自分の隣にもう一人
分身を作り出すカエン。


「んで、コイツは2/1」


その分身にも
意志があるようで
すぐさま敵に身構える。


「終いだ、失せろ」


分身とカエン、二人の
右手と左手から
黒ずんだ紅の炎が
化け物に向けられる。

しかしそれでも
化け物は余裕の笑みを
浮かべていた。


【黒焔】
地面すら風化させてしまう
地獄の炎が敵を呑み込む。

しかし、それでも
化け物は立っていた。