†魔界戦記†



「遅かったな」


火焔が僕を見つめている。


「待たせてゴメンねぇ」


いつもの会話だった。

ここに来る前
僕たちのいた世界では
よく僕がカエンを待たせては
謝っていた。

意思は違っても
会話だけは変わらない
それが嬉しかった。


辺りはさっきとは
うってかわって静かで
まるでこの世界で
二人だけになったみたいだ。


「トード、わかるな?
これが宿命だ」


僕を見るその瞳が
鋭さを増していく。


「宿命なんて関係ないよ
僕には君を止める
そして・・・
一緒に帰る義務がある!!」


見た場所の時間を
自由自在に操る『時術』

でも僕は視線をそらさない。

君の考えてるコトが・・・
僕にはわかる!!


微かに震える大気の渦
僕の左斜め後ろ
刀を持った、君がいる。


【グラビトン】
左手を握る動作に鼓動して
火焔の右腕が
嫌な音をたてて潰れた。

飛び散る血飛沫
宙を舞う肉片

一秒でも早く・・・
一秒でも早く
こんな戦いは終わらせたかった。

カエンの傷付く様なんか
僕は見たくないんだ!!


ゴォォォォォォ


「え?」


カエン・・・?

気づいたのは
人の形をした大きな炎に
呑み込まれた後だった。