「さて、行くか」


トードを小脇に抱えようとすると


「触らないで」


まだ意識があったのか
トードが必死の抵抗を試みる。


「抵抗するなら
無理にでも連れていく」


より一層強い力で
トードを引こうとした・・・

しかし、出来なかった。


急に背後に強烈な視線を感じ
慌てて振り返ってみる。

そこにはもちろん
誰もいなかった。


いや・・・
正確には、『生きた人間』は
誰もいなかった。

視界に映るのはあの少年
ピクリともしないで
横たわっている

私が裁いたハズの
あの少年だった。

額から嫌な汗が滴り落ちる。


「気の・・・せいか」


不安を振り切って
もう一度トードに
手を伸ばす・・・


ゾクッ


また、だ

なんだこの感じは・・・

まるで時間の流れに
取り残されているような
違和感が全身を包んでいく。


出来れば振り返りたくなかった。

しかしそんなコトは言えない。

なぜなら後ろで
砂を蹴る音が聞こえたから

なぜなら後ろで
木の枝を踏み折る音が
聞こえたから・・・


もう、近いな


決心して後ろを向く


「な・・・な・・・」


予想通り、しかし予想外。

ふと横を向けば
さっきとはうって変わって
今まで誰にも
見せたコトのないような笑顔を
向けているトード。


「あ・・・あぁ・・・

よかった・・・
ホントに、よかった・・・




























生きてたんだ・・・カエン!!」