首に大きな勾玉をつけた
巨大な狐が闘技場に現れる。

それはひと鳴きすると
ミストを守るように
尻尾を巻きつけていった。


「シャウル!!元気してた?」


ミストは嬉しそうに
その艶やかな毛並みの尾を
ゆっくりと撫でる。


「喚んでくれないから
寂しかったわさ、マスター」


気持ち良さそうに
喉をゴロゴロ鳴らすと
再びプシェルの方を
睨みつける。


「き、キツネだぁ
なんだか可愛いや」


驚嘆するプシェルを他所に
ミストは照れているシャウルを
叱ると先制攻撃を仕掛ける。


「バウンドボイスから
ストラックテイル!!」


シャウルの大きな口から
波動状の水撃が繰り出され

それをかわしたプシェルに
追い撃ちで尻尾を叩きつける。


闘技場を簡単にえぐりとる
鋭利な尻尾は
プシェルにまともに
襲いかかった。


しかし・・・


「痛ぃぃ
こんなに痛いの初めて
僕、なんだか・・・
なんだか怒ってるや」


対したダメージも見られず
動揺が隠せないミストに

今までよりも
素早い動きで近づいてくる。


「ちぃっ」


シャウルは振動波を防ぐため
水の膜をミストに貼りつける。

だがこれが破れるのも
時間の問題だ。

どうにかしなければ・・・。


「マスター、あれやるよ!!」


こくりと深く頷くと
ミストはその場に
魔術を積み重ねる。


「目標捕捉、シャウル
準備はいい!?」


「あいさー!!」


シャウルの体が
少しずつ透き通っていく。

そう、まるで水のように。