「あんの馬鹿」

怒りに燃えるルシファー
彼の通った後は
八つ当たりの生々しい傷が
点々と残っていた。


「修行中に抜け出すとは
やる気の欠片も見られんわ
ミストちゃんにも
愛想尽かされるぞ」







時を遡ること1時間前

















「ルシファー様」

腰に銀色の鈴を付けた天使が
突然ここに来訪した。

透き通る水色の髪に
整った顔立ち
全身から放つオーラは
ルシファーに劣らなかった。


「今更何の用だ?ゼルエル
俺たちと同じ織天使の貴様は
天界四十聖門の
警備担当主任だろう
暇潰してないで帰れ」


つまらん、とでも言うように
カエン捜索を続行する。

しかしゼルエルは
そんなルシファーの
言うことに耳を貸さず
自らの任務をまっとうする。


「神がお呼びです
カエン殿を連れて
早急に光神宮へとの事です」


ばっと振り向くと
そこには
ゼルエルの姿はなかった。

ルシファーは
脳裏をよぎる不安を
一つ一つ潰しながら
落ち着く事に専念した。


「神が・・・カエンを
名指しで呼ぶとは
今思えば俺ですら
初見だというのに
一介の人間が??」


冷静さが売りの自分が
こんなに焦っている事に
つい嬉しくて身震いする。


「カエン・・・
お前はなんなんだ」


ばっと黒スーツを
マントの様に翻すと
ルシファーは
テリーベに足を進めた。











神は、何をお考えなのだ?

ルシファーは
測り知れぬ不安を
ひしひしと
感じとっていた。