第1章 作曲家

『ピピッピピッ』目覚ましがなる。「ん~...もう朝?」と云いながら起きる一人の女性。頭の後ろに一つに結った長く艶やかな黒髪がゆれている。そして、キッチンへ向かうと、手に袋を持って隣の部屋にそっと入った。『ワン!』と犬の鳴き声がした。彼女は、「あら、起きていたん?おはよう♪セイル。」と愛犬のヨーキーに話しかけた。そして手に持っていた袋を傾けてお皿の中にご飯を(カリカリクフード)注いだら、セイルは喜びながら食べていた。彼女はそれを見て微笑んでいた。よく見ると、彼女の右腕には包帯が巻いてある。この包帯の内側には彼女の過去の哀しい出来事を物語るものがあった...
彼女の名は、青野 麻水。身長158cm と小柄な女性だが、とても小柄とは思えないほど、彼女は美しかった。長く艶やかな黒髪、清んでいるのに潤っている目、白い肌、整った顔立ち、やさしく癒すような声、女性ならば望むものを青野は全て持っていた。青野は朝ご飯を済ませると、包帯を外した。その右腕には醜いほどの火傷の後があった。青野は「やっぱり、暑い!蒸れる~」と云いながら新しい包帯を巻いた。そして、白いキャミソールの上に透けているレース地のTシャツのようなものを着ると、下からたくさん線の入ったニット地のようなスカートに、また上からキャミソールのようだけど丈が長く、あばら骨の下のほうまで胸元の開いているものを着て、灰色のベルトを腰に巻き、上から長袖のカーディガンを羽織って「セイル、行ってくるからね♪」と云って、仕事の為にスタジオへ向かった。