【完】空とキミ ‐十朱 朔也‐



………

……




「もう平気?」

「…お陰様で回復いたしました」


…壁に寄りかかり、天井を見上げつつ息を吐く。

マコは呆れた顔をしながら水を飲み、隣に腰掛けた。




「朔也は酔わない人だと思ってたけど、意外と酔うんだね」

「…飲み慣れてないワインだったからだと思う」

「じゃ、私とおんなじだ」

「うん」


そんな短いやり取りをしてから、お互いに息を吐く。




「ねぇ朔也」

「はい」


「さっきのって…、本気?」


不安そうな、寂しそうな、苦しそうな顔。

それを見つめながら、小さく頷く。




「好きじゃなきゃ、キスなんてしない」


俺は、

マコが好きだ。






「…愛してる、って言葉もホンモノ?」

「うん」


「……ありがとう」




…不安そうだった顔がにっこりと笑い、手と手が静かに触れ合う。




「この前は“わからない”って言ってたのにね?」

「…時が経てば人も想いも変わるよ」


「んー、でも“好き”って気持ちは一生変わらないでいてもらいたいなぁ」

「努力はする」

「ちょっとぉ、そこは“ずっと好きだよ”って言うところでしょ」


「あー…ごめん」

「ま、それが朔也らしいけどねー」


あははっ、と楽しそうに笑うマコ。
だから俺も、そんなマコを見つめて小さく笑った。




「よし! じゃあ安泰な未来を願いながら乾杯しよう!!」


……って、また飲む気かよ。




「…酒は、しばらく飲みたくない」

「あははっ! 実は私も!!」




…と言うことで。




「乾杯!」




グラスになみなみと入った 水 を、二人で飲みながら微笑んだ。