薄暗くなってきた街を車は進んでいく。
マコはラジオから流れる流行りの歌に合わせて歌い、楽しそうに笑ってる。
「ほらー、運転上手でしょー?」
…上手いというか、至って普通。かな。
……そう言ったら後々怖そうだから、適当に返事をしておいたけれど。
「明日は実家から職場に行くのかぁ。
いつもより早く起きなきゃいけないから面倒だなぁ。
あ、明日だけじゃなくてその後もかぁ…結構キツいかも」
「すぐ慣れるよ」
「だといいけどねー」
「うん」
…マコは、明日から1週間実家から職場に通うことになった。
アパートで使っていたベッドやその他の物を一掃するらしい。
だけど仕事がある日は大きく時間が取れないから、しばらくは実家から通う。ということだ。
車に乗る前、ご両親に電話をしたマコは話しながら笑って、それから俺を見ながら「迷惑かけてごめんなさい」と言った。
…その言葉は俺に向けられたわけじゃなくて、ご両親に対するものだとわかってる。
わかってるけれど、俺はマコを見て小さく頷いた。
そして、今。
「色々迷惑かけてごめんね」
今度こそ、マコが俺にそう言った。



