――……。
……。
食事を終え、マコが俺を見る。
「ねぇ、アパート寄っていかない?」
…と、甘くささやいて微笑むマコ。
だけどそれは、決して甘いものじゃなくて。
「私これから実家に帰るからさぁ、服とか運ぶの手伝って?」
……甘いささやき、もとい媚びた笑顔だ。
「さすがにさぁ、今日一人であそこに寝るのは、ね」
「…ん」
……確かに、気持ちはわからなくもない。
元彼氏が侵入していた部屋。
知らないだけで、他の日にも侵入されていたかもしれない部屋。
そんな場所に一人で居て寝るなんて、俺でも気持ち悪い。
だからマコと共に、必要な物を車に積んでいく。
「よし、じゃあ乗って乗って!! 家まで送ってあげるー!!」
「…いや、俺は電車で帰る」
「え、ちょっとそれって、私の運転が怖いってこと?」
「え?あ、いや、そういうわけじゃ…」
「…さぁ乗った乗った!! 飛ばすぞー!!」
…聞けよコラ。
「この前お母さんを乗せたんだけどねー、“キャー!!”って喜びの声上げてたよ?
だから大丈夫!! 私は運転が上手い!!」
…それって、喜びの声じゃなくて恐怖で悲鳴を上げたんじゃ?
と思ったけれど、「何も言うな」なマコの視線が怖かったから黙っておくことにした。
「じゃ、しゅっぱーつ!!」
ハンドルを握るマコの声と共に、車が動き出す。



