【完】空とキミ ‐十朱 朔也‐



…マコの顔を見ることは出来ず、グラスの中の氷と水を見つめながら言葉を選び、そして確かめながら放っていく。


「…年上とか年下とか、そういうのは関係ないと思う。
辛い時は言えばいいし、苦しい時は泣けばいい。

無理して笑う必要なんてないと思う。て言うか…、」


……一瞬、躊躇う。

だけどこのまま黙っとくなんて出来ないから、だから、小さく深呼吸してからマコを見る。




「…俺の前では、無理して欲しくない」




…俺の前では、ありのままのマコで居てもらいたい。

そう思ったから、真っ直ぐにマコを見つめた。




「………」


マコは、呆然と愕然を足して割ったような妙な顔をしていた。

その顔が数秒続き、そしてその後にふっと小さく笑う。




「年下のくせに、生意気だなぁ」


…柔らかで優しくて、大人の女が醸し出す余裕のある笑顔。
それによく似ている。


「…俺から見れば、マコの方が年下みたいだよ」

「あ、また中学生とか言うんでしょー?
酷いなぁ、実はちょっと気にしてるんだよ?」


そう言いながらも表情は崩れず、むしろ、優しさが増しているような気がする。




「朔也」

「うん?」


「ありがとう」

「…うん」






……その後のマコは、いつもと変わらず馬鹿なことを言って笑ってた。

だけど時々、妙に優しく、そして甘えたような表情(かお)をする。


そのたびに「女」を意識して、鼓動が速まる。

もちろん、それに気付かれないように振る舞ったつもりだけれど…、でも、多分気付かれてる。


…マコは、俺の変化に気付いてる。


気付いてもなお、マコはマコであり続け、そして俺も俺であり続ける。




俺とマコは、なんなんだろう?


ただの友達?

それ以上? それとも、それ以下か?




わからないまま笑顔で話し続け、そして、食事を終えた。