【完】空とキミ ‐十朱 朔也‐



――……。


……。


長い長い数時間が終わった。




…午後、4時。




「あーお腹すいた!」


マコがいつもの調子で言い、はぁ〜あ、と息を吐く。


「恋人とのもつれ」と言えば簡単だけど、実際は何時間も話し合いをして、そしてようやく解決したわけで。


「まったくさぁ、ご飯くらい出してくれたらいいのにねー」

「だね」


長い長い話し合いの中で出されたのはコーヒー1杯。

たまに昼食を抜くことはあるし、まぁ我慢しようと思えば出来るけれど…、


「私、朝から何も食べてないんだよー…もぉ死にそうっ!!」


…寝起きすぐに俺を迎えに駅まで来たマコは、朝から何も食べてないらしい。




「何か食べようか」

「そりゃ食べるよ! 食べなきゃ死んじゃう!!」

「あはは」


……あんなことがあったのに、マコは相変わらず元気だ。

だから俺も、彼女を見ていつものように笑う。






「でも酷いと思わないー?
お巡りさんさぁ、私を見て一言目が“小学生かな?”だって!!」

「せめて中学生って言ってくれればいいのにね?」

「そうだよねー。って、違うから!!」


そんな話をしつつ、ファミレスへ。






「ねぇ朔也、ご飯食べ終えたら帰っちゃう?」

「ん? まぁ…帰るかもね」

「ふぅーん」


メニューを見るマコは興味無さそうに返事をして、それから窓の外を見る。




「ウチを覗いてたのもアイツだったのかな?」


騒がしいファミレス内で、ポツリと言って息を吐く。


「…私が知らないだけでさ、実はしょっちゅう侵入されてた?」

「…さぁ、どうかな」

「もぉー…こういう時は“そんなことないよ”って言ってよ。
“そんなことない”って思いたいから言ってるんだよ?」


「あー…ごめん」

「気の利かない男は嫌われるよー?」


水を飲み、ニコニコと笑うマコ。


それを見て思う。 強い女だな、と。

そして…、


「…アンタは強いな」


……つい、口に出して言ってしまった。