…中は驚くほど静かで、驚くほど綺麗に片付いていた。
余計な物なんて何一つ無くて、龍輝の部屋以上にシンプルな部屋。
マコが言ってた通り、一人暮らしには広い部屋。
「………」
誰も居ない。
何も無い。
マコが生活してる“いつも”と変わらない部屋。
何も無い。 大丈夫。
きっと、彼女が鍵をかけ忘れただけだ。
大丈夫、 大丈夫…。
そう思って、ドアのところで待つマコのところへ戻ろうと振り返った時…――、
「…っ……」
――…男が居ることに気が付いた。
男は俺の近く…――部屋の中からマコを見ている。
「おかえり、マコ」
…優しく温かな声。
その声の主に、マコの顔がますます青くなってるのが隙間から見えた。
「電話もメールも繋がらないから、部屋に来ちゃったよー。
お前さぁ、俺のこと怒ってたくせに、お前だって男を連れ込んでるじゃん」
……この人は、マコの元彼氏…?
「お前は俺一筋だろー?
それなのになんで男を連れ込んでるの? この前の腹いせ?」
顔は見えないけれど、きっとニコニコと笑ってるだろう男。
「………」
その脇をスッと通り抜け、マコの手を掴む。
そして…――、
「マコ、待てよ!」
――…男の声を後ろに聞きながら、アパートから離れた。



