…マコはきっと電話の向こう側で首を傾げ、不服そうな顔をしてると思う。

だけど…、だけどコレは引けない。




「…マコが楽しそうに喋って嬉しそうに笑ってるのを見て、俺も楽しかったし嬉しかった。
そりゃあ手持ちは無くなったけど、“それでもいい”と思えるものがあったんだ。

…だからこんな風にされたくない。
こんな物が無くたって俺は、マコと居たあのとき幸せだったんだ」


…そう言った直後。




プー プー プー ....




…切られた。




「…何やってんだ俺」


いや、何言ってんだ俺。




「お前、やっぱりマコっちゃんのこと好きなんじゃん」

「…さぁね」

「なんだそりゃ。
んで? マコっちゃんはなんて?」


「切られたから知らない」

「え、切られたの? なんで?」


…知るか。




「…帰って寝る」

「こっちから電話してみれば?」


「したけりゃ龍輝がすればいいだろ」

「番号知らねーもん」

「…お前にやる」


ひょいっ、と携帯を龍輝へと投げる。




「何、携帯置いてく気?」

「今日はもう疲れたから携帯なんて見たくない」

「あはは、相当怒ってるな?」


「別に怒ってない」

「コレはどうすんの?」


と、茶封筒を示す龍輝。




「……テキトーに置いといて。
今度会った時に返すから、使うなよ?」

「あはは、りょーかい」


龍輝がニッと笑ったのを見つつ、小さく息を吐く。




「明日また来る。おやすみ」


そう声をかけて部屋を出て、星が煌めく空を静かに見つめた。




“マコと居たあのとき幸せだったんだ。”




…何言ってんだよ俺。

何やってんだ。


なんで…、




「…なんで切るんだよ、馬鹿」