「…俺、そういう冗談嫌いなんだよ。
だから、アンタもそういう悪ふざけはするな」


それだけを言い、また駅の方へと歩き出す。




「…朔也」

「何?」

「ごめん」


「…いいよ別に」


さっきまでけらけら笑ってたマコが、今は俯いたまま歩いてる。


……ちょっとやりすぎたか?

いや…、どちらかと言えば俺の方がやられてるよな…。




「あのさぁ朔也」

「うん?」


「…んー、やっぱりなんでもない」


…なんだそれ。




「何?どうした?」

「んー、とね。 腕、ちょっと痛い」

「…あ、ごめん」


そういえば、マコの腕を掴んだままだった。

パッとすぐに離したけれど、掴んでた部分が少し赤くなっている。




「あー…、ごめん、大丈夫?」

「全然平気! 朔也って細身だなぁと思ってたけど、意外と力あるんだねー」

「…そう?」


「そうだよぉー。“私の方が絶対強い!”って思ってたけど、これじゃ負けちゃうなぁ」


へへっ、と楽しそうに笑い、4歩前に出る。




「今日は久しぶりに男の子と遊べて楽しかったなぁ。ありがとね!」

「…ん」

「じゃ、またね!」


そう言ったマコは、初めと同じようにブンブンと手を振り、笑顔で去っていった。




「…またね、か」


また来て俺を破産させる気?

なんて思いながら小さく笑う。




「…俺も楽しかったよ」




遠くに見える背中を見つめ、そっと静かに言う。




「またね、マコ」


…彼女は振り返らなかったけれど、俺は最後まで彼女を見つめ、そして小さく手を振った。