「私のことを拒否したら、週末のたびに押し掛けるからね?」
「………」
「絶対拒否すんなよー。
毎週押し掛けるなんて、電車代が大変なんだから!」
…心配なのはそれかよ。
「ねぇ朔也、拒否しないでよ」
「…俺は何も返事しないから、結局拒否と同じだと思うけど?」
「それでもいいよぉ、繋がってるのがわかるだけで嬉しいもん」
えへへ、と無邪気に笑うマコ。
「拒否したら、本当に押し掛けるからね」
そう言って大きく手を振り、さっきと同じように歩き出す。
「メル友からスタート!! よろしく!!」
「………」
「じゃ、バイバイ!!」
元気よく手を振り、また振り返ることなく行ってしまった。
「…ほんと、変な女だな」
…でも、
案外いい女だ。
「………」
開きっぱなしだった携帯を見つめ、キャンセルボタンを押した後に閉じる。
「アホなこと言ってきたら、すぐ拒否るぞ」
もう見えなくなったマコに呟き、ふぅーっと息を吐く。
雲一つ無い、晴れ渡った空。
その空の下で、ゆっくりと目を閉じる。
笠井 真子
カサイ マコ
マコ
彼女の名前が頭から離れることはなく、そしてまた、彼女の笑顔も消えることなく俺の心にあり続けた。