「ねぇ、」


誰かに声をかけられ、振り返る。

…そこに居たのは、さっきまで公園のベンチに座ってた女の子。


その子はにっこり笑い、そして…――、




「私の体、今日だけ好きにしていいよ?」




――…突拍子もないことを言う。




「…はい?」

「だからぁ、私のコト好きにしていいから一晩泊めて欲しいの。
そのくらい言わなくたってわかるでしょ?」

「………」


…アホか。

という言葉を飲み込み、首を横に振る。


「…悪いけど、そういうの興味無い」

「えー、そうなの?
あ、もしかしてまだ童貞? 真面目そうだもんねぇー」


……はぁ…。




「…用はそれだけ? なら、俺はもう行くよ」

「言い返さないんだ?」

「時間の無駄」


「あはは、冷たいねー。
でも私、そういう人嫌いじゃないよ?」


…俺はキミみたいな子は苦手だけどね。

と思いながらも、何も言わず歩き出す。




「ねぇお兄さーん、私しばらく公園に居るからさぁ、気が向いたら声かけてねー!!」


…そんな声を後ろに聞きながら、振り返ることなく歩き続けた。