「知ってるよ」

「…出た方がいいんじゃ?」


「いいよ別に、放っとけば止まるから」

「でも…」


……あ。

止まった。


「ほらね、止まったでしょ?」


と、にっこり笑った彼女が空を見上げる。

その横顔は、なんだか少し寂しそう。




「…出なくてよかったんですか?」

「いいよーぉ、どうせ彼氏だもん」

「それなら出た方がよかったんじゃ…」


「いいのいいの、もう“元”彼氏だから」


…え?




「昨日さぁ、久しぶりに彼氏ん家に行ったんだよねー。 いわゆる遠距離恋愛!
で、一人暮らしの彼の部屋で、彼が帰ってくるのを待ってたわけ。

そしたら彼、女の子の肩抱いて帰ってきたの。
でさ、その女の子に“妹が急に来ちゃってー”ってへらへら言って。

なんか、そういうの見てたら反論するのも面倒臭くなっちゃって。
それで“お邪魔虫は消えますー”って部屋を出て、この公園に居た」