「朔ちゃん、あの子どう思う?」


大雅の言葉が、すべての始まりだった。






いつものように龍輝のマンションへと向かっていた途中、公園のベンチに座って空を見上げる女の子が居た。

傍らにはパンパンに膨らんだリュックと、コンビニの小さな袋。


旅行者…いや…、




「…家出娘」

「あはは、そうだよねぇー」


…実際はどうかは知らないけれど、俺と大雅は「家出中の女の子」と見た。

そして大雅は、声をかけるかどうかを迷ってる。




「もうすぐ暗くなるけど、あの子寝る場所とかあるのかな?」

「さぁ」

「うわー朔ちゃん冷たいなぁ。
そんなんだから彼女出来ないんだよ?」


…放っとけ。




「あ、でもどっか行くみたいだね」

「ん?あぁ…うん」


俺たちが話してる最中にその子はリュックを背負い、コンビニの袋を持って歩き出す。




「可愛い子だったねー。中学生くらいかな?」

「さぁ?」

「…朔ちゃんって、なんでそんなに冷めてるのかねぇ…」


はぁ〜あ、と深く息を吐く大雅。

…別に、冷めてるつもりはないんだけどね。




「それよりも大雅、早く行かないと健吾が料理食べ尽くすよ?」

「うっわ忘れてた!! 早く行こう!!」


慌てて駆けていく大雅を後ろから見て笑い、俺も歩き出す。


と、その時。