玄関の前に着くまでそんな
他愛のないことを繰り返して
それが緊張を解すためだったなんて
気付くわけもなく、先生はインターホンを
押して、私の手をきゅっと握った。




「 っ・・・・ 」




はーい、ってドアの向こうから
聞こえたその声に肩が上がる。
後ずさりしそうになる私の手を
離した先生はすかさず腰に手を回して、




「 負けるな、澪。
  大丈夫だから 」




”俺が居る”って多分どんな言葉より
心強いその一言にグッと奥歯を噛み締めて
腰に回された先生の手にそっと手を添えた。







──────────ガチャッ




「 ナオちゃん!! 」




家の中から飛び出してきた彼女は
嬉しそうに先生に抱きつこうと
両手を伸ばした。




「 ・・・・・ッ 」


「 そういうこと
  しに来たんじゃない 」