「 ・・・・先生、ここって・・・ 」




1時間ほどで着いたそこに
私は驚きを隠せなかった。




大きな家に、綺麗な庭に、
今まで見てきたどんな家より
凝っていて、




”東条”と書かれた表札も
その辺の家のものとは違って
デザインされたものだった。




「 俺の実家 」


「 実家・・・って何でですか・・? 」


「 何で、ってここなら人の目気にせず
 思う存分できるだろ 」




懐かしい、と表札を指先でなぞる
先生を横目で見ながら、
私は両手で顔を仰いだ。




冷静にいられるわけもなくて
挨拶しないと、だとか
何か持ってくればよかった、だとか
頭の中はパニック状態だった。




「 澪、早くしろ 」




”暑い”と眉を寄せた先生が
私の手を掴んで、数段の階段を
上がったその向こうにある玄関へと
手をひかれて連れて行かれる。