「 浮気なんて、しませんよ 」




先生以上の人なんてきっといない。
意地悪でどうしようもなくて
だけどこうしてたまに気持ちを
くれる、心の底だけ優しい人。




「 ・・・なお、だいすき 」




指輪に視線を落としながら
そう言えば、撫でていた手は
離れて、先生は口元を覆っていた。




小さく笑いを零しながら、
私にはそれが照れ隠しだということが
ちゃんと分かっていた。




暑い夏、少し寒い車内。




今年の夏は、きっと今までで1番
思い出ができる気がする。




「 ・・・・・知ってる 」




少し遅れて返ってきた返事に
やっぱり私は小さく笑った。