【美咲】

雨だ。

今日はあの人来ないかも。

そう思いながら私は一人、
病室でふけっていた。

もうこの病院に住んで
12年になる。

『住んで』って言い方は
おかしいけど、それほど
長く私はここにいるみたい。

家族なんか私の誕生日に
来てくれればラッキー。

そのくらい家族には
会ってない気がする。

「美咲ちゃん、あなたにお客さん。」

そう言って、看護師さんと
入って来たのはあの人だった。