【颯】

「遅れました!」

俺は編集室に入って早々、叫んだ。

「うるさいね、まったく。
あと10分あるし…」

セーフだったみたい。

「これ、今回のです。」

そう言って、写真を渡す。

「毎度、どうもね。」

ありきたりな返事だ。

俺はカバンの中身を整理する。

「あれ?」

「どした?」

「俺と弟の写真入ってません?」

「入ってないけど…」

なくなってしまった。

はぁ…。

あれが亡くなった弟との
最後の一枚だったのに…。

俺は途方に暮れながら
家に帰って行った。