【美咲】

カシャッ。

またか。

よくこの病院の屋上で
写真を撮る人がいた。
名前は確か『早坂颯』だったよね?
前に看護師さん達が雑誌見ながら
騒いでたのを見たことがある。

彼が慌てて駆け出していくと同時に
少し開いていた彼のカバンから
一枚の写真が、落ちていく。

病気のせいで走ることなんか
忘れてしまった私にはただその写真を
拾うことしか出来なかった。

写真には今よりは少し若い颯さんと
颯さんに似た男の子が写っていた。

弟さんかな?

どこかで見たことあるような…。

ま、いっか。

「美咲ちゃん、お部屋戻ろうか。」

私の担当の看護師、宮間さんが
私を迎えに来た。

「宮間さん、これいつも写真
撮りに来る人に渡しといて。」

宮間さんに彼が落とした写真を渡す。

「分かったわ。さ、入って。」

私は自分の部屋に戻る。